夏休みに受けたレファレンス事例集

 

県立図書館では、毎日、子どもから大人まで、利用者から様々なレファレンスを受けます。この夏に受けたレファレンスの一部を、カウンター毎に紹介します。

 

こどものへやカウンター

こどものへやでは、夏休みに入ると、自由研究に関するレファレンスが多くなります。内容は様々ですが、その中から二つご紹介します。

【問】牛乳パックはどうやって作るの

この他にも、ろうそくの作り方など「○○はどうやって、できるのか」というレファレンスが多くありましたが、見つかりそうで、なかなか資料がなかったものがこの牛乳パックです。ようやくたどりついた資料『モノづくり解体新書二の巻』(日刊工業新聞社 1992・10)に「飲料水用紙パック」として説明されていました。このシリーズでは、「輪ゴム」などの日用品から「ブラウン管」などの工業用品、大型なものでは「ロケット」まで、「モノづくり」の疑問が解決できます。多くの図を使い、わかりやすく説明されているので、大人向けの本ではありますが、小学校高学年ぐらいからでも利用できます。

その他に「ものの作り方」を調べるには、

  • 『できるまで図鑑 全七巻』アリス館1994・10
  • 『どうやってつくるの?MONO知り図鑑 全五巻』国土社 1997・3
  • 『21世紀版 できるまで科学館 全五巻』河出書房新社 2001・4

などが活用できます。

【問】いもりの飼い方を教えて

自由研究の一つとして、カブトムシやモルモットなど様々な生きものの飼い方を調べにくる方も多く見られました。

その中でも珍しいものが「いもり」です。『犬の飼い方』などといったように、「いもり」の飼い方だけを取り上げ、一冊にまとめた資料はありませんでしたが、『生きものの飼い方(ジュニア自然図鑑5)』(実業之日本社 1995・5)には、「毎日の世話、たまごを産ませよう、イモリの一生」などコンパクトにまとまって紹介されていました。また『図解水生動物飼育観察の教室』(杉浦宏 北隆館 1984・7)では飼育のほか、観察のポイントが書かれてあり、自由研究の参考になります。飼育の面からだけではなく、『いもり(かがくのとも)』(金尾恵子 福音館書店 1987・7)では、いもりの生態を知ることができ、飼育の参考になります。

ペットの飼い方を調べるには、飼育の本だけでなく動物の生態の資料も参考になることがわかる事例です。

 

新聞・雑誌カウンター

【問】叙勲制度が変わったらしいので詳しいことを知りたい

インターネットやデータベースで「叙勲」を検索しましたが見つかりません。「今年の春から変わった」とのことでしたので、とりあえず春の叙勲の記事を新聞で確認したところ、どうやらキーワードは「叙勲制度」ではなく「栄典制度」が適切らしいことが分かりました。再び「栄典」で検索したところ続々とヒットし、資料を提供することができました。

【問】明治二十年代に『日本新聞』という新聞が発行されていたかどうかを知りたい

一度「発行されていない」と回答しましたが、どうも気になるのでもう一度探した結果、『新聞の今昔』(河合勇著 新日本新聞社)に載っている、明治二十二年から大正三年に発行されていた『日本』(日本新聞社)のことと思われました。当館でも一部所蔵していることもあわせてご連絡しました。

どちらも正確なキーワードの重要性を実感しました。

 

社会科学カウンター

【問】歴史上の有名人の家紋について調べています。織田信長の家紋は何ですか

今年の夏は、家紋に関するお問い合わせが多く寄せられました。

動植物や、幾何学図形など、家紋には多くの種類がありますが、徳川家の三つ葉葵の紋などは特に有名でしょう。

ちなみに、織田家の家紋は「織田瓜(織田木瓜とも言う)」。瓜の実や葉を紋章化したと言われる、「五瓜紋」と呼ばれる種類の紋でした。

普段意識しないことの多い家紋ですが、お盆のお墓参りのときなどに、改めて家の家紋はこうだったか、と意識された方も多いのではないでしょうか。

【使用文献】 『日本家紋総鑑』 千鹿野茂著 角川書店 1993・3、『家紋大図鑑』 丹羽基二著 秋田書店1971・3

【問】おばけの本はありますか

夏といえばお化け(?)。夏休みには、お化けに関する問い合わせも数多く寄せられます。児童室にもお化けや妖怪に関する資料はありますが、大人向けのコーナーにも詳しい資料があります。

天狗・河童・龍や鬼など、恐かったりユーモラスだったりの、お化けたちの由来や歴史、姿形などを改めてごらんになってみてはいかがでしょうか。

【使用文献】 『図説・日本未確認生物事典』 笹間良彦著 柏美術出版 1994・2、『水木しげるの妖怪事典』 水木しげる著 東京堂出版 1981・9

 

人文科学カウンター

【問】高校一年生が評論文を読んで感想文を書かなければならない。読むべき本の参考例として挙げられているものは難しいので、もっと易しい内容の本はありませんか

他の図書館からのレファレンスです。

例として挙げられた本は、『日本人の死生観』(河合隼雄著)、『考えるヒント』(小林秀雄著)等三十二冊。それらより易しい内容ということなので、若者向けの読書案内の本、リーフレット等を紹介することにしました。

『若い人に贈る読書のすすめ2003』(読書推進運動協議会)

まず、こちらのリーフレットを紹介しました。読書推進運動協議会は、昭和三十四年に「読書週間」を契機に結成され、様々な読書推進運動を実施している団体です。このリーフレットは新成人・新社会人となる人を対象に毎年作成されています。高校生にも充分興味を持って読むことができる本が紹介されています。

その他には以下のような本を紹介しました。

  • 『高校生のための読書案内 学校司書が選んだ173冊』 福島県高等学校司書研修会ブックリスト編集委員会編 福島県高等学校司書研修会 1998・7
  • 『YA読書案内』 赤木かん子ほか編 晶文社 1993・9
  • 『ブックレットで現代を読む』 岩波ブックレット編集部編 岩波書店 2000・4
  • 『21世紀の必読書100選』 河上倫逸監修 21世紀の関西を考える会 2000・12
 

自然科学カウンター

【問】晴れているのに雨がパラパラ降っていることを「狐の嫁入り」と言うと聞きましたが、雨の呼び方って他にもありますか

晴れた日が続かない夏休みだったせいか、雨の名前についての質問です。

日本では、生活から雨を決して切り離すことができません。それ故、季節により、地域により、様々な雨の呼び名を持っています。質問にあった雨は天気雨のことですが、他にも「狐雨」や「日照雨(そばえ)」(そばえとは、ふざけるという意味です)、「天泣(てんきゅう)」などの呼び名があります。また、三重県志摩郡では「あがり雨」、鹿児島県徳之島では「天道雨(てぃだあみ)」、徳島県では「虹の小便」、島根県隠岐島では「化雨」などと呼ばれています。因みに群馬県佐波郡では、天気雨というと時雨を指すそうです。

【使用文献】 『雨の名前』 高橋順子他著 小学館 2001・6

【問】自動車のナンバープレートに書かれている数字には意味があるの。色が違うのはなぜ

そもそもは、なぜ自動車にはナンバープレートが付いているのかという疑問。大人向けの資料では、子供向けに簡潔に書かれたものがなく、子どものへやの資料で回答。

ナンバープレートは、その車が道路を走っても良いという許可証です。また、車の種類や使用目的、持ち主が誰かなどがわかるためのものです。例えば、普通車の場合、白地に緑字は自家用車、逆に緑地に白字は事業用車です。軽自動車ですと、自家用車は黄色地に黒字、事業用車は黒地に黄色字になります。書かれている地名は、登録した陸運事務所を、その隣の数字は車の種類を示しています。また、ナンバーの前に付いているひらがなも、車の使用目的を示しています。

【使用文献】 『記号の図鑑④ 交通の記号』 江川清他編著 あかね書房1991・2

※自動車登録番号標に関する様々な規則については、「道路運送車両法施行規則」や「自動車登録規則」により定められています。

 

地域資料カウンター

レファレンス件数の多い事例としては、人物や系図に関するものがあります。

有名人はもちろん、市井の人の生きた証を、資料の中にたどるのです。古い電話帳や住宅地図、名鑑や同窓会名簿など、資料の森に奥深く、入って行くのです。

【問】大正八年に三十歳で夭折した(福島市)瀬上町の歌人門間春雄について

  1. 家は醤油製造業であったが、その醤油の名称と製造されていた年代
  2. お父さんが町長をしていた期間
  3. 血筋の方が現在瀬上町に存在するかどうか
  4. その他門間春雄に関する資料・情報について知りたい

このような調査依頼文が、研究者から届く。さて、どこから調べていくか。まずは当館にも所蔵している、岩波書店(昭和六年)発行の遺稿『門間春雄歌集』を見る。序文は、齋藤茂吉が寄せている。年譜をたどり、事実関係を確認していく。書庫の産業部門の、大正期からの商工名鑑のようなもの、歴史的分野の実業家・資産家・地主総覧の類、古い電話帳など、手当たり次第見ていく。すると、確かに名前は出てきて、かなり手広く事業を展開させていた形跡はあるのだが、《醤油の名称》がわからない。それでもしつこくページをめくっていくと、見つけた!『東北醸造家銘鑑』(大正十三年刊)に、銘柄の写真まで載って【門間醤油店】が紹介されていた。「図書館の資料の蓄積ってすごい。」と、感激する一瞬でもある。「手当たり次第に」と言ったが、資料が体系化されて使いやすく整理されているからこそ調査もはかどるのである。

「2.お父さんが町長をしていた期間」は、『福島市史』第十三巻に歴代の市町村長名が掲載されており解決。

「4.その他門間春雄に関する資料・情報について知りたい」は、同じく『福島市史』第五巻等に、正木不如丘らと東北文芸協会を組織したことなどの記述があること。また、妹の丹治千惠の著書二冊と、長男の門間敏昭の著書一冊を当館で所蔵しており、その中に、春雄について書かれている部分があることをお知らせした。「3.血筋の方が現在瀬上町に存在するかどうか」については、関係者の存在を確認した。

利用者サービスは、多くの方々と知り合う契機ともなります。行き詰まった時、質問者や関係機関の方々がヒントを提供してくださることがあります。

レファレンスは、資料をもって回答するということが原則ではありますが、「人とのつながりも大切にしなければ」と、感じております。
[資料情報サービス部]