世界遺産に関する本

 

今年は、国連文化遺産年です。それにちなみ、今回は、所蔵資料の中から、世界遺産に関する本を紹介します。

 

世界遺産を理解する

国家を超えた人類の財産、世界遺産とは?

世界遺産とは、過去の人類の歴史を刻む遺跡や、文化的価値の高い建造物、そして、貴重な自然環境を保全する事により、人類共通の財産を後世に継承していくことを目的に、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が、1972年に採択した「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に登録されている物件のことです。

中でも、文化遺産とは、歴史上、芸術上、または学術上顕著な普遍的価値をもつ記念物、建築物群、記念的意義をもつ彫刻及び絵画、考古学的な性質の物件、または構造物やこれらの組み合わせとされており、タージ・マハルやパリのセーヌ河岸、日本では、法隆寺や厳島神社などが登録されています。

国連文化遺産年について

今年は、世界遺産条約が採択されてから30周年にあたります。国連は2002年を「国連文化遺産年」と定め、さまざまな文化間の相互理解の促進のため、その共通基盤となる世界の文化遺産を保護することの重要性を認識することを目的として、世界の文化遺産に関する教育を促進し、意識を高めるよう各国政府に協力を求めています。

(以上の情報は、以下の資料を参考にしました。)

  • 『世界遺産Q&A ~世界遺産の基礎知識~』 シンクタンクせとうち総合研究機構 2001・9

世界遺産についての基本的な情報を、写真や地図、グラフなどを使い、Q&A形式でわかりやすく解説しています。

世界遺産の登録基準、関係機関や、わが国の世界遺産関係状況から、ユネスコの職員になる方法、世界遺産についての参考URLなど、多くの情報が掲載されています。

そのほかにも、このシリーズでは、

  • 『世界遺産事典 ~関連用語と全物件プロフィール~』 2001・8
  • 『世界遺産学入門 ~もっと知りたい世界遺産~』 2002・2
  • 『世界遺産データ・ブック』 2001・1
  • 『世界遺産マップス ~地図で見るユネスコの世界遺産~』 2001・1
  • 『世界遺産ガイド ~産業・技術編~』 2001・3
  • 『世界遺産ガイド ~日本編~[1]、2』

など、世界遺産に関する各分野の多くの資料が出版されています。

  • 『世界遺産学を学ぶ人のために』奈良大学文学部世界遺産を考える 会編 世界思想社 2000・10

この書は、古都奈良の文化財が世界遺産に登録されたのを機に学科の枠を超えた「世界遺産コース」を開設した、奈良大学の「奈良大学文学部世界遺産を考える会」によるものです。

 世界遺産学は、学際的で博物学的、自然・歴史・宗教・建築・国際学等、地球と人類の進化の過程を学ぶ総合学問と言われています。それをどう学ぶかを、日本文学研究・環境研究など四つのアプローチから、詳細に述べています。

  • 『UNESCO世界遺産年報2002』 日本ユネスコ協会連盟編 日本ユネスコ協会 連盟 2002・2

号ごとに、前年度に指定された遺産を美しい写真で特集するほか、前年度登録の世界遺産、関係機関や世界・日本の世界遺産をめぐる動き、世界遺産をよりよく理解するためのデータなどが掲載されています。

  • 『総合学習に役立つみんなの世界遺産』 岩崎書店 2000・4

 戦争や環境汚染などで崩壊の危機にさらされている「危機遺産リスト」や、広島の原爆ドームなどに代表されるような人類のマイナスの歴史の遺産である「負の遺産」などについても、くわしく解説。児童対象の学習用ですが、大人が読んでも十分参考になる資料です。

 

世界遺産を楽しむ

  • 『ユネスコ世界遺産』 全13巻講談社 1997-1998

各地域の遺産ごとに、文化遺産については、その歴史・風土・文化など、自然遺産については、その景観や、独特の動植物、学術的意義などを、一つ一つの遺産について、多くの美しい写真と、詳しい記述・コラムなどで解説しています。

多くの情報が得られ、眺めるだけでも楽しい全集となっています。

  • 『世界遺産屋久島』 日下田紀三著 八重岳書房 1994・8

樹齢7200年と言われる縄文杉をはじめとする天然杉の森、山、亜熱帯の海。その特異な美しい自然で世界遺産に登録された屋久島。その魅力の全てを美しいカラー写真とともに詳しく紹介しているハンディーな写真集です。

著者は20年前に屋久島に移り住み、現在、屋久島自然館館長。屋久島への思いが伝わってくる一冊です。

  • 『水墨画・ヨーロッパ世界遺産紀行 ~ハンガリー・イタリア・フランスを描く~』 卓吾著 秀作社出版 2000・11

「文化遺産は水墨画で描くのが最も素晴らしい」と語る著者が、ブダペストやポンペイ、ベネチアの町を題材に描く水墨画集です。フランスの田舎村の茅葺き屋根の民家や、素朴な教会、ベネチアの運河のきらめきが水墨画で見事に表現されています。

  • 『ユネスコ世界遺産125 佐藤敦子の遺跡紀行』 佐藤敦子著 光村印刷 2000・11

東京理科大学理学部化学科出身の著者が、仕事の合間に実際に訪ねた180ヶ国のうち、特に印象に残っている世界遺産125物件を地域別に紹介。イースター島モアイ像についても「モアイは千体、凝灰岩で造っている」など各遺跡の岩石の成分などにも言及しており、理系の著者ならではの細かい分析と説明が興味を引きます。

  • 『世界遺産7つの旅』 世界遺産を旅する会著 小学館 2001・3

風景画のような色とりどりの美しい写真満載で、古都・自然・芸術・祈りなどをテーマとした、世界遺産を巡る7つの旅。その地を訪れたかのような、贅沢な気分を味わわせてくれます。

 

世界遺産について考える

  • 『世界文化遺産 法隆寺』 高田良信著 吉川弘文館 1996・11

法隆寺は、世界最古の木造建造物群として、日本で初めて世界文化遺産に登録されました。この書は、建物だけでなく、法隆寺が歩んできた1400年の道にもスポットを当て、永きにわたって法隆寺を支えたものは何か、創建・再建をめぐる謎についても解き明かしています。

  • 『世界遺産の経済学 屋久島の環境価値とその評価』 栗山浩一著 勁草書房 2000・5

「ユネスコ世界遺産」の価値とは? 文化遺産と自然遺産の違いとは?自然遺産に指定されたことから、その地域では、地域振興や観光開発に対する期待と自然保護との対立など深刻な問題が生じることがあります。

この書は、屋久島を調査対象として、その環境価値を、詳細なデータを基にいろいろな面から評価し、その保護と利用のあり方を考察しています。

全国各地の文化・自然遺産の保護や行政の環境政策の手引き書にもなる1冊です。

  • 『白神山地 ブナ原生林は誰のものか』 根深誠著 つり人社 2001・10

長年、白神の自然に親しみ、林道建設反対運動に身を投じてきた著者が、「自然保護」の名のもとに行われる入山禁止に、自然と人間との交流を切り離す行為ではないかと、警鐘を鳴らす1冊。本当の世界遺産保護とはなにか、考えさせられます。