平成30(2018)年度に紹介した「お薦めの1冊」

 

『ふくしま新聞史読本 なぜ福島県には2つの地方紙があるのか』

町田 久次/著 歴史春秋出版 2018

福島県には「福島民報」「福島民友新聞」という2種類の地方紙が存在します。県内に住んでいると当たり前のことのように思えますが、実は全国的に見ても非常に稀なことで、福島県の他に2つの地方紙を持つのは、沖縄県のみです。

では、なぜ福島県には2つの新聞があるのでしょうか。それぞれの新聞はどのように生まれ、現在に至るまでどのような歴史を負ってきたのでしょうか。元新聞記者の著者が語る福島県の新聞史は、波乱とドラマに満ち溢れています。本書を通じ、2紙が繰り広げてきた激動の歴史を感じてみませんか。

2019年1月22日 vol.176掲載

 

『ヒトラーと暮らした少年』

ジョン・ボイン/著 あすなろ書房 2018

第2次世界大戦中のパリで孤児になった、ドイツ人の父親とフランス人の母親とユダヤ人の友人を持つ少年・ピエロは、ヒトラーの別荘で働くおばさんの元に 引き取られ、そこで様々なこと経験していきます。彼が信じ、認められたいと思ったものとは、一体誰で、何だったのでしょうか。

時代や置かれた環境によって正しさは変化しますが、その中でも信じるべきものを決めるのは、 これらのせいではなく自分自身です。

2018年12月20日 vol.175掲載

 

『発掘された日本列島 2018 新発見考古速報』

文化庁/編 共同通信社 2018

日本列島には46万ヵ所以上の遺跡があり、毎年約8000件もの発掘調査が行われているそうです。文化庁は、調査の成果の一部を「発掘された日本列島2018」展で紹介しており、本書はその公式図録です。

今回、福島県からは「羽山横穴(南相馬市)」と「清戸廹横穴(双葉町)」が掲載されており、両者とも特集展示の『装飾古墳を発掘する!』の中で紹介されています。最先端の調査結果に触れながら、古代のロマンに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

2018年11月20日 vol.174掲載

 

『長いしっぽのポテトおじさん』

上崎美恵子/作 笠原美子/絵 岩崎幼年文庫 1984

30年以上前に出版された本ですが、「図書館アラカルト」で紹介した、ずっと探していた本です。

小学2年生のリナは、お父さんとポテトチップスという 名前の老犬と暮らしています。ある日、犬の呼び名を「ポテトおじさん」に 変えた途端にリナだけと話せるようになります。お母さんを病気で亡くした少女は、ふとした時に周りの友だちと違うことで傷ついてしまいます。そんな時にポテトおじさんやお父さんは「ほかの人と同じことがしあわせとはかぎらない」ことを教えてくれるのです。

2018年10月22日 vol.173掲載

 

『ある明治人の記録 改版』

石光真人/編著 中央公論新社 2017

義和団事件での活躍によって世界各国から賞賛を受けた柴五郎は会津藩の生まれであり、戊辰戦争終結後は下北半島の斗南藩に移封され、厳しい生活を余儀なくされました。

本書は柴五郎の出生から士官学校での生活までを本人が書き記した第一部 「柴五郎の遺書」と、編著者がいかにして本書を編集するに至ったのかについて、柴五郎との関わりや人となりを時代背景とともに描く第二部「柴五郎翁とその時代」の二部構成となっています。

戊辰戦争や明治維新について、あまり語られることのない側面から歴史を知ることができる本書を、この機会に手にとってみてはいかがでしょうか。

2018年9月20日 vol.172掲載

 

『質問する、問い返す 主体的に学ぶということ(岩波ジュニア新書)』

名古谷隆彦/著 岩波書店 2017

世の中には、正解のない問題がたくさんあります。最近、そんな問に対して、答えは人それぞれだからと答えを濁してしまう人が多い傾向にあるそうです。自分の考えを 自分の言葉で表現できるようになるためには、どうしたらよいのでしょうか。また、その自分の意思や考えに従って主体的に生きるようになるためには、どんな学びの場が 必要でしょうか?

「質問する」ことのプロであり、教育現場を長く取材してきた共同通信社の記者が、 主体的に生きるための処方箋を一緒に考えます。

2018年8月20日 vol.171掲載

 

『スマホゲーム依存症』

樋口進/著 内外出版社 2018

スマートフォンが普及するのに伴い、スマホゲーム市場が近年爆発的に拡大しています。いつでもどこでも始められるスマホゲームは、日常生活を離れてリフレッシュできる時間をもたらす反面、クリアというゴールがないこと、「ガチャ」という機能によってギャンブル的な刺激を与えることといった特徴により、依存状態をもたらすリスクを併せ持っています。そして今やこうした危険性は、子どもだけでなく働き盛り・子育て世代にも及んでいます。

本書では、精神科医である著者が、スマホゲームに関する社会・医学的状況を、統計的な根拠を踏まえつつ丁寧に紹介しています。スマホゲームに依存状態になったときに、患者の脳内で何が起こっているのかを解説するほか、治療にあたっての具体的な内容、患者を支える家族へのアドバイスなども記載され、まだ新しい現象であるスマホゲーム依存症に対する最新の知見をわかりやすく知ることができます。

2018年7月20日 vol.170掲載

 

『カラー版 やさしい歯と口の事典』

下山和弘、秋本和宏/編 医歯薬出版株式会社 2018

6月4日から10日は「歯と口の健康週間」でした。歯や口の健康はむし歯や歯周病だけではなく、全身の健康にも影響を及ぼすことが知られるようになりました。

この本は「できるだけ正確に歯科の情報を伝える」「専門用語を使うが、わかりやすい説明を加える」を目標に歯科全般の解説がされています。専門的な内容もありますが、文字ばかりでなく写真やイラストが  多用されているので理解しやすいと思います。

私も該当しますが、歯医者が苦手で我慢できなくなった時にしか受診しないという方は多いのではないでしょうか? この本を読むことで、歯や口に関して日常生活で意識したほうがよいことなどを知ることができます。なかなか手に取りにくい本かもしれませんが、歯と口の健康を考える上で参考になる本です。この機会に読んでみてはいかがでしょうか。

2018年6月20日 vol.169掲載

 

『旗本・御家人の就職事情』

山本英貴/著 吉川弘文館 2015

江戸時代の武士も就職活動をしていた!?

旗本・御家人と呼ばれる徳川家直属の武士は、幕府から役職(仕事)を貰うための就職活動をしていました。役職数は旗本・御家人の人数と比べて少なかったため、家柄や人脈を総動員しながら役職に就く努力をしました。

本書は、あまり知る機会の無い下級武士による就職活動の実態や就職後の出世に関するルールについて解説されており、日本史好きの興味をそそる一冊となっています。

2018年5月21日 vol.168掲載

 

『図書館の自由委員会の成立と「図書館の自由に関する宣言」改訂』

塩見昇/著 日本図書館協会 2017

「図書館の自由に関する宣言」をご存知ですか。図書館が戦前・戦中期に 政府権力等の意を汲んだ情報提供をしたという反省から、権力に屈せず「主体的に資料収集・提供の是非を判断する自由」、「利用者の秘密を守る自由」、「検閲からの自由」を宣言したもので、公共・学校など全ての図書館を対象としたものです。

宣言を題材とした中高生に人気の小説に『図書館戦争』シリーズ(有川浩/著、角川書店)があります。本宣言に興味のある方へ、こちらの小説もおすすめします。

2018年4月20日 vol.167掲載