福島の蔵書印 その36
福島第一尋常高等小学校の蔵書印と蔵書票

 

福島第一尋常高等小学校の蔵書印福島第一尋常高等小学校の蔵書票

わが国の近代教育は、明治5(1872)年の学制の発布に始まる。「一般の人民必ず邑に不学の戸なく家に不学の人なからしめん事を期す」の理念のもと、国民皆学の近代的教育制度がスタートした。

学制の実施に伴い、これまでの教育を担ってきた藩校、寺子屋、私塾は姿を消し、本県においては、明治6(1873)年県下の先駆けとして、現在の「福島市立福島第一小学校」の前身「福島小学校」が誕生した。翌明治7(1874)年現在地に、木造二階建て、和洋折衷の新校舎が完成。敷地内には変則中学校と師範学校の前身である小学校の教員養成を目的とした講習所が併設され、教育のセンター的役割を担った施設でもあった。

明治9(1876)年6月、明治天皇の東北御巡幸時に校舎は、行在所(あんざいしょ)として使用されている。御巡幸に同行した内閣顧問木戸孝允は、「終始一誠意」の扁額を揮毫し、以来「終始一誠意」は校訓として受け継がれている。

昭和9(1934)年、行在所となった校舎は行幸記念館として保存され、一階には明治以降の教科書、参考書類を収める「一誠文庫」が新設された。

上掲の印影は当館所蔵『奥羽観蹟聞老志 十四』から採録したものを画像処理して掲載した。印は校印を蔵書印として使用したと推察される。表紙には「福島一誠校蔵書」の印字のある蔵書票が貼付されている。昭和初期の一時期、福島県立図書館の前身である旧福島市立図書館に教科書を貸与していた(註)との記録もあり、当館所蔵の経緯はこのあたりであろうか。校名は事情により幾度か変遷し、「福島県信夫郡福島町立福島第一尋常高等小学校」は明治30年代の名称である。


*註:『生活実践の環境施設と活用の実際』福島市福島第一尋常高等小学校 1936
参考文献:『一誠の百年』 福島第一小学校創立百周年記念事業実行委員会 1973
『福島県教育史』福島県教育委員会 1972

〈地域資料チーム:丹野律子〉