子ども読書年と図書館

 

1999年8月、衆参両議院本会議において、今年2000年を『子ども読書年』とする決議が採択されました。今年5月5日に一部開館する「国際子ども図書館」のオープンにあわせてのことになります。「読書」というきわめて個人的な行為に関して、国会の決議がされたのは異例のことです。その陰にはたくさんの人たちの熱意と努力がありました。

 

子どもと読書

子どもたちが本を読まなくなったといわれはじめて久しいのですが、図書館における貸し出しの3割は、児童への貸し出しです。当館にも、読みたい本を探してリクエストをする子もいれば、OPAC(利用者端末)を駆使して目当ての本を見つける子もいます。つまり、本を読む子と読まない子との格差が目立ってきているということです。

今、本を読まない子は、本を読まない大人に囲まれた子どもたちと言い換えることができます。子どもには「本を読みなさい」と言う大人自身が、読書から遠ざかっていないでしょうか。第52回読書世論調査によると1ヶ月に1冊も本を読まない成人は4割もいます。これでは、大人が読書の意義をどんなに力説しても、説得力がありません。周りにいる大人が本を読む姿を子どもに見せることが何よりのメッセージです。

また、身の回りに感動できる本がなく、本の世界で冒険をしたことのない子どもが増えてきている、ともいえます。その要因として考えられるのは、幼い頃に読み聞かせをしてもらった経験がなく、読書の楽しみを知らないこと。学校・塾・稽古事・クラブ活動などで子どもたちが忙しすぎること。メディアが多様化し、子どもたちの興味が分散してきていること。本を読むこと=知識を得ることという大人側からのプレッシャーなど様々です。

そのことに気がつき、子どもと本を結びつける活動をしている人たちが全国に大勢います。本当に子どもたちに出会って欲しい本を作ろうとしている作家・編集者・出版社。地道にいい本だけを売り続ける子どもの本屋さん。その本を子どもたちに紹介している文庫の主宰者や児童図書館員。そしてたくさんのおかあさんやおとうさん。これからは、そういった方たちが連携していくネットワークづくりが必要です。子どもたち1人1人へのサービスをより充実させるための、資料の相互利用の促進、個々の持つ情報の公開、読書活動への援助などの拠点として全国の図書館や「国際子ども図書館」が活動するときです。

 

図書館と子ども読書年

図書館の子どもへのサービスは、改めて声高に言うまでもなく毎年が「子ども読書年」です。子どもへの本の貸し出しやおはなし会の開催などの直接サービスは、ほとんどの図書館で行われています。それらをふまえて、これからは学校・幼稚園・保育所・保健所・児童館など関係機関へ図書館サービスのPRをし、連携を図っていくことが必要です。それが、図書館へ来たことのない子どもたち、つまり読書から遠ざかっている子どもたちへの間接的な働きかけになります。

また、読書への誘いに加えて、調べ学習への援助も図書館の重要な使命です。子どもたちの調べていること、興味のあることに関する適切な本を、手渡していくことが求められています。

 

国際子ども図書館

国立国会図書館の支部上野図書館が「国際子ども図書館」として生まれ変わります。

この図書館では、児童書とその関連資料を国の内外を問わず広範に収集し、利用に供するとともに、電子図書館的な機能を活用した情報の提供を行う予定です。約40万冊収蔵可能な図書館になります。このように、日本に初めて国立の子どものための図書館ができます。現在も、国立国会図書館は児童図書を約13万冊所蔵していますが、利用できるのは18歳以上という年齢制限がありました。国際子ども図書館では、従来できなかった広範かつきめ細かなサービスが提供されることを期待しています。

 

様々な動き

子ども読書年の全国的な行事として、国際子ども図書館では、5月5日の開館記念式典に併せて国際シンポジウムを企画中。郵政省では3月31日に記念切手を発行。参議院においては「子ども国会」の恒例化、などが予定されています。他にブックフェアの開催や児童図書の出版社によるイベントなども実施されます。

しかし、子ども読書年の関係者は「子ども読書年は単年の事業ではなく読書元年の位置づけです」と言っています。子ども読書年がただのお祭りに終わることなく、継続的な活動となって地域・学校・家庭に根ざし、図書館とのよりよい関係ができていくことを願っています。

<振興課・佐藤>