巻頭随想 「民話と児童文学」 片平 幸三 氏

 

子供達に教室で民話を語ったら、面白いからもっと聞かせて、と言ってくれた。それに応えるためにも調べてみようと各地を歩き民話を集めて何年か過ぎた。かなりの数が集まったので整理して昭和三十三年十月「福島の民話」が東京未来社から出版された。 このころは地方にいて東京の出版社から出版することが少ない時代だったためか、反響は大きかった。福島の新聞社から「続・福島の民話」を週一回書くことを勧められ、連載が始まり二年ぐらい続いた。これが終わるとNHK福島放送局から、子供向きの放送劇を福島放送劇団の出演で放送したいとの話があった。そして決まったことは、毎週土曜日の午後六時五分から三十分までの番組で、福島の民話を子供向きの放送劇として放送すること、その放送台本を執筆することであった。

台本を書くことは、前に学校劇の脚本を何本か書いた経験があったので、何とかこなせるだろうと、引き受けた。

最初の放送日のスタジオである。三秒前、二秒前、スタートでテーマ音楽が流れてきた。これはレコードになっていて、主題歌を歌っているのは児童合唱団の人達だった。放送は録音でなく生放送だからミスは許されないけれど、充実感があったことを覚えている。

「福島の民話第二集」がでたのは昭和四十一年九月で、この時は公民館の長寿学級や婦人学級から頼まれて話をしに行くことが多かった。

「ふくしまの民話」は福島中央テレビの福島文庫の一冊で民話と解説を書いた。「茂庭の大蛇」は平成十二年に福島商工会議所婦人部により出版された民話絵本で、今度ダムになる茂庭に伝わる伝説をまとめたものである。

児童文学の短編はいくつかあるが、長編としてまとめたのは「燃える白虎隊」で歴史春秋社から出版した。この本は評判が良く十九刷まで版を重ねることが出来た。読者からの手紙は小中学生から来た感想文が多かった。

「凌霜隊と鶴ヶ城」は昭和五十九年に歴史春秋社から出版したもので、会津へ救援に来た郡上藩の凌霜隊の碑が飯盛山に建てられた記念出版の本で、会津ライオンズクラブの人と郡上八幡に取材に行ったことが思い出される。

「大鳥城の継信忠信」は福島出版社から出版したものである。

平成十一年九月二十五日「学校のオオハクチョウ」が第十一回日本動物児童文学賞を受けることになり、上野公園水上音楽堂での受賞式に行った。この作品は「生きる仲間・特集号」として全国の学校・図書館に配付された。

「会津娘子隊」は自分で絵を描いた絵本で歴史春秋社から出版している。

自分の著作を中心にして歩いて来た道を辿ってみた。いまも書きたいものはまだあるし、機会があれば民話も語ってみたい。新聞の編集や、短歌詠みもやっているが、長生きして精一杯励みたいと考えている。

片平 幸三(かたひら・こうぞう)
1952年伊達郡保原町生まれ。福島市在住。
福島師範(現福大)卒。福島児童文学研究会長、日本児童文学者協会員、第11回日本動物児童文学賞受賞。
著書「福島の民話」「燃える白虎隊」「凌霜隊と鶴ヶ城」ほか。